日本海ものがたり 世界地図からの旅

中国文学者の著者がこの本を書こうとした動機は、ロシアのクリミヤ半島併合(2014年3月)のとき黒海を地図でながめ「ほとんど必然的に」日本海のことを考えずにはいられなかったとある。わが国は日本海北方領土(北海道を含めて)に無関心であり過ぎた。フランス海軍大佐・ラペルーズ(1741年-1788年)は1785年にフランスのブレスト港から世界就航をはじめる。ホーン岬をめぐり太平洋に入って目まぐるしく太平洋を探検。1787年対馬海峡から日本海に入って日本海を北上。サハリンまで出かけてサハリンがユーラシア大陸の半島ではなく海峡を隔てた島であることを発見している。1617年当時のヨーロッパの日本地図はかなり現状に近いことに驚いた。伊能忠敬の大日本沿岸海輿地全図はそれから200年も後の1821年のこと。
詳しく紹介するのはしんどい。すごく刺激的な本だった。ロシアも中国も虎視眈々と太平洋に乗り出そうとしているという現状を改めて認識した。
面白かったことを2、3。
ガリヴァー旅行記(1726年)と日本海。1740年のアムステルダム発行の日本地図に Kubitesima という島が載っている。 kobitosima(小人島)のことで奥尻島にあたる。ガリヴァーは小人国に行くのだが、アイヌのコロボックル伝説がここに流れていることを暗示している。
ラペルーズは能登半島舳倉島付近で日本船2艘に遭遇している。満帆の風を受けて、まっしぐらに走っている姿をラペルーズ船の画家がスケッチ(本の表紙絵になっている)している。すばらしくカッコいい。舳倉島を眺めて絞首台らしい柱が見えたとレポートしている。どうやら鳥居をそう見たらしい。

日本海ものがたり 世界地図からの旅 中野美代子著 岩波書店


1617年の日本地図 種子島への鉄砲伝来は1542年

小人島の記載がある地図