二人のエンジニア

電子立国日本を切り開いて来た二人のエンジニアの奮闘記を読んだ。一人は佐々木正、シャープの副社長だった人だがトランジスタLSIMOS(その中身はよく分からない)など半導体から太陽電池、液晶ディスプレイまで、この人がいなくては現在の電子機器産業はなかったと思われる。アップルのS.ジョブズ孫正義が師匠 恩人と崇める。こんなエンジニアが日本にいたのだとびっくりした。この本は読み物としても面白い。川西機械製作所の真空管・レーダー技師をスタートラインに神戸工業(富士通テンの前身)から早川電機(のちにシャープ)と半導体を牽引して来た。電卓、ザウルス、ノートパソコン、携帯電話と僕の電子機器の多くはシャープだったから、随分長くお付き合いがあったことになる。佐々木さんがいるにもかかわらずなぜシャープはダメになったのだろうか? 図体が大きくなった企業はコントロールが効かなくなるようだ。成功が慢心を呼ぶのだろう。
もう一人は竹内 健、東芝でフラッシュ・メモリーの開発にあたった。その奮闘記で開発現場の雰囲気を生々しく伝えている。東芝メモリというのは日本にとって貴重な財産だと思う。むざむざと売りに出されるのは残念でならない。竹内さんは東芝をスピンアウトして東大にもどった(現在は中央大学理工学部教授)。我田引水のところもあるけれど、エンジニアの生き方として面白く読んだ。
ロケット・ササキ 大西康之著 新潮社

世界で勝負する仕事術 竹内 健著 幻冬舎新書