日本橋バビロン

日本橋バビロン 小林信彦著 文芸春秋
バビロンはメソポタミアの古代都市。
廃退した栄光の都市である。
そのバビロンになぞらえて日本橋の盛衰のなかに生家の盛衰を語る。
隅田川をはさんで、両側に両国があった。
日本橋隅田川の西側。
川向うは江戸の外、こっちは正真の江戸という気概があった盛り場だった。
明治開化、関東大震災をへて、盛り場のセンターは銀座と浅草に移っていく。
西両国(日本橋)はバビロン化してゆく。とどめは東京大空襲だった。
著者の生家は古い和菓子屋。父は九代目。「売家と唐様で書く三代目」そのもの。
空襲で家を焼かれ、没落の一途をたどることに。
その情景をたんたんと描いている。
どんな町、家族にも語るに足る歴史があるのだ。


東京に育ったといっても、多摩川に近い大森・馬込が僕の居所。
下町とは縁が遠い。盛り場といえば、銀座だった。
日本橋というのは、高島屋丸善ぐらいだった。
その先は、なんだか重苦しい町という感じだった。