真夜中のキリテ・カナワ

深夜3時すぎに目が覚めると誰もいないはずの南側の部屋から音楽が聞こえてくる。
流れているのはキリテ・カナワ。
去年の今頃に亡くなった義父の好きだった曲だ。
恐る恐る部屋をのぞくと闇のなかで聞こえる。
それもスーツケースの中から聞こえてくるようだ。
スーツケースは空っぽなので軽々と持ち上がったが音は止まない。
ふと目を上げると壁に壁掛け型のCD。
壁掛け型のCDからはコード(ひっぱるとON/OFF)が垂れ下がっている。
スーツケースはこのコードを踏みつけていたようだ。
夜明け前の寒さからコードが収縮して電源ONになったのだろうか。