お父やんとオジサン

題名は「お父やんとお母やん、そしてオジサン」とするほうが正しい。
オジサンは日本生まれの在日だが恵まれた環境に育った坊やだ。
共産主義にかぶれて祖国に渡るが現実は理想とはかけ離れたものだった。
北が攻め込んで混乱しボロボロの郷土。
郷里にもどっても裏切り者として命を狙われ,穴倉にかくまわれる生活。
父親は若い時に越境者として日本にやってきてさんざん苦労して事業をおこす。
家族愛からお父やんが彼の地に潜入し義弟(お母やんの弟 オジサン)を救出する。
お父やんの冒険譚ではあるが、朝鮮動乱の悲惨さが描かれる。
繁栄する韓国の50年前はそんなひどい状況だった。
著者は、家族のためにその混乱に身を投じる父親を尊敬しながら成長すると反発する。
この物語の続きが「海峡」シリーズ。


お父やんとオジサン 伊集院 静著 講談社