一週間

昨年亡くなった井上ひさし氏の遺作の長編小説。
主人公は左翼運動家だったが、満州で召集されシベリヤ抑留の身となる。
ロシア語ができたことから、ソ連赤軍の日本人捕虜向けに発行される日本人新聞の編集に携わる。
そこでの一週間の体験が語られる。
捕虜収容所から脱走した軍医が語るレーニンの手紙の話に展開していく。
シベリヤ抑留生活の過酷さは凄まじい。
戦後の復興・シベリヤ開発に日本人捕虜を酷使するソ連の狡猾さ。
関東軍上層部は旧軍隊組織を残して兵の上前を撥ねてのうのうと暮らす。残虐な収容所生活。
日本政府は捕虜の権利を定めた国際法に無知なうえ兵60万人をシベリアに放置。
この重いテーマを井上ひさし氏はさしたる悲壮感なく描いていく。
著者が座右の銘とした言葉が思い出された。
  むずかしいことをやさしく
  やさしいことをふかく
  ふかいことをおもしろく
  おもしろいことをまじめに
  まじめなことをゆかいに
  ゆかいなことをいっそうゆかいに


一週間 井上ひさし著 新潮社