孤愁 サウダーデ

この本のことは数日前に触れたが、ようやく読み終えた。700ページ超えの大部だった。Iさんのおすすめと去年ポルトガルに行ったことが読み始めた動機。
ポルトガル統治のマカオの港湾局副司令官(海軍中佐)だった39歳のときに来日。以来外交官として神戸、大阪で領事をつとめ、退任後は死ぬ(75歳)まで徳島で余生を送った。その当時の日本人の考え方や暮らしぶりを紹介して、もうひとりの小泉八雲ラフカディオ・ハーン)と並び偉大なる日本紹介者として知られる。なかなか好人物で日本人を妻として暮らした。サウダーデはポルトガル人のもつ愁いだが、遠く離れた故国を思う心でもある。日清・日露戦争前後の日本の状況を活写しているのと日本の精神をよく理解しているのに感心した。
大航海時代に大活躍したポルトガルの衰退。旅したポルトリスボンを思いながら読んだ。
父親が書き残した絶筆小説を30数年かけて引き継いで書いた藤原正彦の努力にも感銘を受けた。

孤愁 サウダーデ 新田次郎藤原正彦著 文春文庫