ととろの家とその周り

紀伊長島の海にそそぐ赤羽川に沿って422号線は山にむかう。
山塊に阻まれて十須という集落で道は途絶える。
つまりどんづまりの山奥である。源氏蛍が自生するという土地だ。
ととろの家はここのバス停(日に2本)にある。
数年前の集中豪雨(宮川村豪雨 山向こうは宮川村)で川が溢れてととろの家も水没。
部屋の柱や壁にそのときの泥水のあとが残る(畳の上1mぐらいの高さ)。
家屋はNさんの兄上の努力で修復されたが、家の前の河原は流木や岩石がころがって
荒涼とした景色だった。ここ1年で復旧工事がすすんで整備されたが、自然美からは程遠い。
こんなととろの家の周りには、鹿、猪や猿が出没する。
トイレに行こうとしたら猿とハチあわせし、目があってしまったこともあるという。
道路をはさんですぐ前は、集落の墓地になっていて、朝は村人が墓参りに来て声を掛けあう。
まわりに灯火がないので、夜は少々気味が悪い。そのかわり星空がきれいだ。
道路をクルマが地響きをたてて通りすぎるが、寝るころはクルマは途絶えて静寂の世界となる。
ふとんの中でじっとしていると周りは深い闇、しばらくすると深い眠りに落ちる。
いつもここではぐっすり眠ることができる。
この日の朝、河原に立ったが寒風が吹きすさびスケッチどころではなかった。