物語は平基衡の東大寺焼き討ち(1180年)あたりから始まる。浄土信仰の平安仏像は武家台頭を背景に鎌倉仏像に変わっていく。その中心にいるのが奈良仏師の棟梁・運慶。筋肉たくましい東国武士の肉体美を仏像に転写した。運慶の造形美もすごいが、一族の統率力、公家社会と武家社会と真言仏教界を上手く渡りあるく政治力もすごい。それまでの京仏師(円派、院派)に対抗して奈良仏師(慶派)をまとめ上げた。頼朝、北条時政、北条政子、後白河法皇、後鳥羽上皇・・・・大きな歴史の流れが語られ、仏師としての一生が描かれる。久しぶりに夢中になった歴史小説だった。奈良の仏像や神護寺の仏像を訪ねてみたい。
荒仏師 運慶 梓澤 要著 新潮社