還れぬ家

認知症を患い老いていく父親の介護を克明に描いた佐伯一麦私小説。母親、妻、兄弟、親戚との人間関係、介護施設東日本大震災を巻き込んだドキュメンタリー。これまでの佐伯作品と同様に自身の半生記でもある。子供返りしていく父親、確執のあった母親とのやりとり。再婚した奥さん(草木染め作家)の存在が大きい。私小説作家というのはなんとも因果な商売だなあと思う。介護の実態を見せてもらって身につまされたことだった。

還れぬ家 佐伯一麦著 新潮社