黒井千次さんは僕より10歳年上の作家だ。とくに読み込んだ作品はないが、この本の帯に惹かれた。「人は自らにふさわしい老い方をするより他にない」と。あとがきに老化報告と書いているが、どれも身につまされる話。歳とるとはこう言うことか。年老いていく老人の身辺雑記だけれど、さすがプロのモノ書きでうまくまとめている。暮らしへの目配りがいい。見習いたい。
・目と耳、どちらの衰えが辛いか
・空足を踏む恐怖
・コインとか錠剤 小さな物を落とす
・85歳の暮らしぶりは先行指標みたいで参考になった
昨日の朝日俳壇から
・一湾を 引っ張りあげて 鱚を釣る 青野迦葉
・枇杷の実の 重さは種の 重さかな 小田島美紀子
・雨ひと日 泰山木の 花錆びる 玉手のり子
蝸牛の句はグッゲンハイム美術館(NY)を想起したけれど、それはフランク・ロイド・ライトの作品だ。どこかで混線している。
鱚を釣る は北斎的な構図を感じた。
枇杷と泰山木は同感! 僕の実感もそうだ。