幕府側からの幕末史 天を測る

咸臨丸を操船しサンフランシコに渡った小野友五郎は、算術にたけ物事をクリアに見通し実直にこなす実務家。笠間藩家臣から旗本に取り立てられ、鳥羽・伏見の戦を幕僚として指揮、幕府の崩壊を目の当たりにする。この物語は幕府側からの幕末史だ。勝麟太郎福沢諭吉は咸臨丸で一緒だったが、いい人格には描かれていない。勝は声だけは大きいが、話の中身がない(船に弱い艦長)。福沢はいいかんげんなチャランポラン(公私混同の自己中)。坂本龍馬も怪しげな浪人と一刀両断。明治新政府は幕末の幕府が築いた遺産を引き継いで成立している。ドラマティックな展開にかけるけれど幕末史として面白く読んだ。

 天を測る 今野 敏著 講談社

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