山岳小説を読む

山岳小説というジャンルがあってときどき手にとるのだが、この作家の小説ははじめて。
秩父の山小屋を舞台にいくつかのエピソードが描かれる。
脱サラして父親の山小屋を引き継いだ主人公、ホームレスの初老の男、死ぬために山にきて腰をおちつけたOL。
山の厳しさとか登頂物語ではなく、登場人物の人間臭さが中心となっている。
山塊のなかにも小説になるような物語が紡ぎだされる。
心温まる読後感がある。
奥多摩の低山ハイクが中心だった僕には、奥秩父の山々はいつか行きたい憧れだった。

春を背負って 笹本稜平著 文藝春秋