ロケット・ササキ

シャープが鴻海に買収されて再建を目指している。シャープが輝いていたのはロケット・ササキが陣頭指揮していた時代だった。こんな事態になったのは液晶パネルに特化して多様性を失ってしまったことによるのだろう。
佐々木正は川西機械製作所(紫電改飛行艇など)での真空管開発からスタート、トランジスター・LSI・IC機器に携わり、神戸工業・シャープと渡り歩き電子立国日本へと押し上げた伝説のエンジニア。この人の周りにはトランジスタを発明したショックレー、バーディーン、ブラッテン、江崎玲於奈らのノーベル賞受賞者がいた。さらには井深大松下幸之助孫正義ロバート・ノイススティーブ・ジョブズビル・ゲイツなどが取りまいていた。電卓や電子レンジ、太陽電池の開発もその一端。多様性、開発した技術を惜しみなく与える度量の広さ・・。スティーブ・ジョブズ孫正義サムスンをサポートしたのはドクター・ササキだったこと知った。
僕もシャープへの思い入れは大きかった。電卓、電子端末ザウルス、ノートPC、携帯電話などなど。しかしいつしかシャープ離れしていた。なぜだろう? ササキワールドが色あせてしまったのはなぜだろう? シャープ社内の人的な問題だったように思う。 
本書の読後感は爽やかだった。しかし今のシャープがなぜその延長線上にないのか? 盛者必衰の物語を見るようだ。100歳の佐々木正氏は現場を離れても健在だそうだ。シャープの再建を見守っている。

ロケット・ササキ 大西康之著 新潮社