道具にヒミツあり

道具にヒミツあり 小関智弘著 岩波ジュニア新書
著者は大森・蒲田の町工場で働いてきたベテラン旋盤工だった。
根っからのメカ好き。現場をじっくり取材して自分の頭で考え書いたルポ。
共感するところがよく似ているので、読んでいておもしろい。
技術立国・日本を支えているのは、企業や大学の先端技術集団だけではなく、
中小企業に伝承されてきた技術とど根性。
どんな新設計の構造・システムも彼らのサポート(というよりも必要とするプロセス)
がなくては成立しない。
このあたりのことは語り尽くされた感じだが、この本に案内される現場はわくわくする。
ボールペンの先端ボールも、まさに先端技術のかたまり。
僕もコレクションでも、日本のリフィルが1番。0.25という細さはすごい。
ときどきデザインのよい外国製のペンを日本製リフィルに交換して使っている。
このボールの高精度技術が極小モーターを実現させ、ミクロの世界(医療分野)を開拓してゆく。
最先端技術もこれがなければ成立しないというところに、
町工場の知恵が活かされている事例は数多い。
この本は、そんな最先端技術やそれが生まれたエピソードを紹介していて飽きない。
これが日本の命綱。最近、若い人の理科離れが話題になっている。
養老先生や福岡先生は昆虫を追っかけるのがいいと言うが、
町工場を訪ねたり機械を分解するのもいいと思う。