新・観光立国論

久しぶりに胸のすくような論調の本だった。日本は観光を舐めているのではないかと思わせる。「おもてなし」とか「ゆるキャラ」、「クール・ジャパン」と言われる数々の事象が観光の基本だと考えるのはおかしい。基本は「気候」「自然」「文化」「食事」にある。「おもてなし」をもとめて観光客が来るわけではない。自画自賛にすぎない。僕も「おもてなし」を全面に出す姿勢に強く違和感を感じてきた。他にも日本の観光戦略・政策について辛口の批判と提言があってもっともだと思わせる。今の表層的な政策で2020年を迎えるのは心もとないものを感じた。著者は在日20年の経済アナリストであり、日本の国宝・重要文化財の補修を手掛ける工芸社の会長兼社長を務める。これは推奨本だ。

新・観光立国論 デービッド・アトキンソン著 東洋経済新報社