サイロ・エフェクト

TVの書評番組で池上彰がこれから読む本として取り上げていた。
高度に専門化する社会では、組織が限りなく細分化・孤立化して全体が見えなくなり沈滞・迷走する。そういう状況・元凶をサイロ(タコツボ化)という。隣は何をする人ぞという無関心、自分の領域は侵されたくないという防衛本能、成果主義の報酬制度などがサイロを形成してゆく。ソニーマイクロソフト、UBS、JPモルガンなどなど枚挙にいとまがない。シャープや東芝もこのサイロ・エフェクトの結果なのだろう。大企業病と言い換えてもいい。対処法として著者は自身の経験(現在ファイナンシャル・タイムズ編集長 ジャーナリストになる前は文化人類学者)から文化人類学のアプローチを提案している。垣根を取り払い、情報を共有、仲間意識の醸成・・・。フェイスブック、NY市庁、シカゴ警察、クリーブランド・クリニックなどの事例紹介がおもしろい。これからのあり方を指し示している。最近のビジネス書のなかでは読みごたえのある1冊だった。京都でもかじりついていた。理数系重視、文系軽視は問題だ。著者の言う文化人類学的な視点からものを見る大切さを思った。

サイロ・エフェクト ジリアン・テット著 土方奈美訳 文藝春秋