ノボさん

正岡常規(つねのり)、幼名 升(のぼる)。血を吐いても自己主張して鳴き続けるホトトギスからみずからを子規(漢語でホトトギスのこと)と名のる。ノボさんと親しみを込めて呼ばれる。太く短い(34歳で没)人生だったが、偉業を成し遂げた。近代文学史のふたりの巨人 正岡子規夏目漱石との交流を中心に明治の文人が多く登場する。森鴎外幸田露伴河東碧梧桐高浜虚子長塚節伊藤左千夫・・・・。漱石との友情はすばらしい。漱石は子規の創刊したホトトギスに「吾輩は猫である」をはじめいくつかの小説を発表する。小説は子規がめざして成し遂げられなかった分野。しかし子規は俳句、短歌、随筆と近代文学の基盤を築いた。青春時代はべーすぼーるに夢中になる。野球は子規が名づけた。野球(の・ぼーる)はノボルからの洒落でもある。わがまま放題の子規を支えたのは母・八重と妹・律だった。僕は松山へは何度か仕事で行ったことがあり親しみを感じる。「坂の上の雲」では語られていない子規の姿がある。伊集院 静の語り口もすばらしい。司馬遼太郎賞受賞。

ノボさん 小説 正岡子規夏目漱石 伊集院 静著 講談社